山口県北部 萩エリア

小久保 凌雲 Kokubo Ryoun

日本と西洋の融合をテーマに
文化と精神を造形世界に模索


生年月日1950年6月29日
出身地三重県鳥羽市
所属萩陶芸家協会理事
窯元名凌雲窯
開窯年1976年
受賞歴
  • 1993、1996年田部美術館
    「茶の湯の造形展」茶碗、水指 入選
所在地〒758-0063 山口県萩市大字山田4793番地の4(Googleマップ
電 話0838-25-6124
交 通JR玉江駅下車3分
駐車場2台
展示場


 三島由紀夫の小説『潮騒』の舞台、鳥羽市神島町生まれ。「あれ(三島の割腹自殺)はショックでした。自分はこんなことをしていていいのか」。アルバイトをしながら夜行列車を乗り継ぎ、北海道から九州へ、その旅の途中の訃報でした。旅は「伝統工芸が好き。とくに土ものが」という信楽、京都、奈良などでの修行でもありました。「休雪白、ぬくもりのある白い釉調との出合いは強烈だった」と、一九七三年吉田萩苑に師事。「萩は歴史でしか知らない土地ですが、島育ちには、海が近いのもよかった」。一九七三年、二十三歳の新しい旅立ちでした。三年後、自分でのぼり窯を築いて独立。日常使いの焼物を作りながら、自己作品の中心を茶陶に置いた活動を続けています。白釉や鬼萩などの手法を用いた造形と色彩に、作者独特の感性が織り込まれます。とくに茶碗は、両掌にやさしく包み込まれる小宇宙を表現し、ざんぐりとした質感の温もりが伝わるものに。茶陶を伝統とする萩茶碗を修辞する言葉はいろいろありますが、「そのような言葉に惑わされず、自分なりに茶陶の新しい境地をめざしたい。気に入った茶碗が、生涯に一つか二つできれば満足です」そして、「作品にもっと内面的なもの表現できないか」と、テーマ性を求める作陶にも意欲的に取り組んでいます。日本的な陶芸に西洋的な要素を融合できないかと模索した結果、行き着いたところは奈良・正倉院に伝わる文物でした。
 シルクロードを通り、海を越えてきたもの。「文化や精神ももたらされました。はるか古代のギリシャやイスラム世界に思いをはせ、仏教芸術の真髄に触れて、それを造形に映しこみたい」。シリーズ化された作品の発表が待たれます。